服従の心理と自尊心の関係

PSYCHOLOGY
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服従の心理と自尊心の関係

服従の心理とは、いかに善良な人間でも権威の前では命令に逆らうことが出来ず、時に冷酷な行動をとらされる心理状態のことを指します。

自尊心とは、社会心理学の言葉で、自己から生み出された自信と価値の要素を持つ肯定的な態度を指します。英語では「self-esteem」と呼び、近年では自己肯定感(pride)と同意味で用いられます。

今回、ゼノンは、あなたの知らない服従の心理の「怖さ」と自尊心の秘密を探り、服従の心理と自尊心の関係が密接に在ることを紹介します。

ゼノン

自分を守る術を一緒に学びましょう。

それでは、早速見ていきましょう。

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服従の心理

服従の心理は、心理学者スタンリー・ミルグラムの実験「権威への服従」に関する研究で有名となりました。この研究は、権威者への指示に従う人間の心理的変化を実験したものです。

服従の心理/ミルグラム実験

この実験は、20歳~50歳の男性を被験者として募り、「生徒役」と「教師役」のグループに分けて行われたものです。しかし、実際には教師役の被験対象であり、生徒役は役者(サクラ)として実験に協力してもらいまいした。実験の内容は、教師役の問いに答えを迫られたサクラが間違った回答を出した時、電気ショックを罰として受けさせられるというものでした。(当然、サクラに電気は流れていません。)

実験主導者は、教師役にサクラが間違える度に段階を上げて電気ショックを与えるように指示し、サクラが実験中止を嘆願しても電気ショックを与え続けるように命令しました。一方のサクラには、段階ごとに苦痛を示す声の調整を頼みました。

真の被験者である教師役は実験の途中に拒否の意志を示しましたが、白衣を着た実験主導者の権威へ服従し、強度MAXレベルまで電気ショックをサクラへ与えました。

この実験の結果、被験者の65パーセントは強度MAXレベルまで電流を流してしまいました。被験者の中には、苦痛の声が響き渡るとあまりの怖さに笑い出す者もいました。また、殆どの被験者は疑念を抱きながら結局断ることができませんでした。この実験により「権威への服従」は証明され、服従の心理は、従う者が多いほど強く働く傾向があることとなりました。同様に、権威に従いたくない者が多いほど服従しない心理が働くようです。

因みにミルグラムの実験は、アイヒマン実験という別名があります。アイヒマンは冷酷で非人道的なナチス戦犯の重要責任者として裁判にかけられた人物ですが、彼は真面目で平凡な人間だったようです。彼は普通の市民として隠れ、勤勉に働き、結婚記念日には妻に花束を贈るような愛情を持つ普通の市民であったと言われています。このことが疑問視され、行われたのが上記の実験です。そのため、アイヒマン実験とも呼ばれるのです。

ミルグラム実験では実際に電流は流れていませんが、被験者の心理的苦痛は確かに起きてしまいました。そのため倫理感を疑問視する批判が多数あったようです。その反省から実験の倫理に議論が深まり、心理学の研究の在り方に変化を与える動機付けとなったのです。

服従の心理は、ミルグラム実験で起きた「権威への服従」の基、発見された自尊心に直接働きかけて人間を狂わせるものなのです。

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自尊心

自尊心とは、自己から生み出された自信と価値の要素を持つ肯定的な態度を指します。また、自尊心は次のように2つに分けられます。

  1. 顕在的自尊心:意識できている自尊心
  2. 潜在的自尊心:意識できていない自尊心

顕在的自尊心は、思考や感情として表に現れるため本人で把握しています。一方で、潜在的自尊心は、本人の発言や行動のフィルターを通して他者は把握することができますが、本人は自覚していないので制御困難です。

臆病な自尊心と尊大な羞恥心

自尊心について表現された「山月記」の話が国語の教科書でありました。この物語に登場する李徴は、科挙に合格するほど秀才でしたが、自尊心が強すぎて役人の仕事を見下していました。李徴はやがて、仕事を辞めて詩作にふけりますが、才能がないことに酷く発狂して絶望します。そうして、見た目が「人食いトラ」に変貌してしまいました。

彼は成れの果て、トラになってしまった理由を「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」としています。詩の才能がないのを周知されることを恐れ、アクションを起こさず、役人の仕事にも馴染めずに、人間社会から追放されたのです。

トラは、「立派な自尊心」の象徴をする反面、「過剰な自尊心は人間社会の外れ者」を意味します。「山月記」の物語で伝えたかったことです。

過剰な自尊心

過剰な自尊心に酔いしれている人の特徴は以下のような人です。

  1. 自分の意見を曲げず、あげく押し付ける
  2. 勝負で物事を思考する
  3. 優位な地位に状況を運ぼうとする
  4. 相手の意見を反論と捉える
  5. 具体的な答えを濁す
  6. 自己肯定感の低いものを餌にする
  7. 支配しようとする
  8. 遠回しに煽る

これらの特徴が多いほど過剰な自尊心(自惚れ)が高いと言えます。

このように、自尊心は自己肯定感を高く持つ上で大事ですが、時に気づかぬうちに自分や周囲にもキバを向いてしまいます。

低い自尊心

日本人は自尊心が低いと言われており、次のような特徴が例に挙げられてます。

  1. 責任感が強い
  2. 他人を疑わない
  3. 理屈で思考する
  4. 依存が強い
  5. 自信が弱い

これらの特徴が多く当てはまる人は注意です。過剰な自尊心の持ち主(サイコパシー)に狙われます。言い換えれば、服従の心理に当てはまります。

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服従の心理と自尊心

服従の心理は、知らず知らずに潜在自尊心に働きかけ、狂わせ、間違った行動をさせてしまうとても怖いものです。ミルグラムの実験は、服従の心理が証明され、歴史に残る実験となりましたが、被験者はこの実験でトラウマ(心的外傷)を受けてしまいました。

このように服従の心理と自尊心には密接な関係が存在しているのです。

過剰すぎる自尊心は、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまいます。自尊心が低すぎると服従の心理に囚われる傾向が強くなり、最悪の場合はトラウマや心的外傷後ストレス障害(PTSD)になってしまいます。

適切な自尊心を持つように気を付け、過剰な自尊心の持ち主に対しては適切に対応しなければなりません。

自尊心の適切な高め方

文字に感情を具現化し、客観的に見つめる。

自尊心を高める最善策として、メモ用紙などに自分の気持ちを文字に起こして客観視することが挙げられます。自分の心が可視化されれば、傷ついた自尊心を見極めることができます。

 

それでは以下の流れで感情を文字に起こし、自尊心の傷を探します。

  1. 何故、自尊心が傷ついたのか(Why)
  2. いつ、何処で自尊心が揺れたのか(When/Where)
  3. 誰が、自尊心を傷つけたのか(Who)
  4. 何で自尊心を傷つけられたのか(What)
  5. どうすれば、自尊心を修復できるか(How)

抽象的に入り、より具体的に入ります。自尊心の傷を探し出し、解決策を導き出します。

成功体験を文字にし、自分を褒める。

自尊心は、自分からうまれた自信や価値です。過去の成功体験を思い出し、何に取り組んだ時、自分を誇りに思ったのか文字に起こして自尊心を修復していきます。思い出すのが大変な場合は、近い過去で良いです。

  1. 上司に褒められた
  2. 就職活動で履歴書を綺麗にまとめられた
  3. 大学時代にサークル活動で夢中になった

このように最近の出来事から次々に文字に起こし、遠い過去までも思い出し、自尊心を修復・回復させます。

リフレーミングをし、プラスに考える。

  • 頑固→一途
  • しつこい→粘り強い
  • 自己中心的→マイペース

このようにものの見方をぐるりと変えます。文字に起こすこともそうですが、声に出すことも大事です。そうして、自尊心を高めます。

過剰な自尊心の持ち主の思考

面従腹背/上辺だけで従うふりをして、内心では一切従わない。」

 

ありがとう/ごめんなさい」過剰な自尊心の持ち主は、この言葉感情が入っていない方が多いです。

 

「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」

 

過剰な自尊心の持ち主は自己肯定感が低いと言えます。

過剰な自尊心の持ち主への対処法

「でもそれって、あなたの感想ですよね?」

心で思うと、不思議と楽になれる、魔法の言葉ですね。

まとめ

今回は、社会心理学の服従の心理と自尊心の密接な関係性を紹介しました。服従の心理から出来るように、過剰な自尊心は人を傷つけます。自尊心は過剰すぎても低すぎても自分や周囲の人に悪い影響を与えてしまうようです。

ネッコ
ネッコ

自尊心は高めてお互いに認め合うのが大切です。

ゼノン

勉強になりました。服従の心理は怖いですね。

それでは、最後までご覧くださりありがとうございました。

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