16歳で数学を捨てるとGABAが減り「脳力」が落ちる?

ココから
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「数学なんて殆ど使わないよ?」

サイン・コサイン・タンジェント。思い起こせば日常生活で使ったのは、いつでしょうか。

「特定の学習行動は、脳機能にさまざまな影響を与える」ということが、近年の実験心理学の実験で明らかになっています。多国籍語を操るスキルがある人は、そうでない人と比べて認知症にかかるリスクが少ないという研究結果です。

多国籍語を学ぶ文系の人にとっては朗報でした。

そこで今回、イギリス・オックスフォード大学の心理学部門の研究者チームは、「特定の学習行動」を「数学」に絞り、思春期の14歳~18歳の学生を対象に2グループに分けて脳に与える変化を調べることにしました。

すると、16歳で数学を捨てたグループは、GABA(ギャバ)濃度が少ないことがわかりました。

GABA(γアミノ絡酸)は、タンパク質を構成しないアミノ酸の一種で、脳機能の改善や最適化に貴重な役割をもたらす神経伝達物質です。

今回は、16歳で数学を捨てたGABA濃度の減少で起こる脳力の低下についてご紹介します。記事の最後には、数学の得意・不得意に関することもご説明していますので、ご参考までにどうぞ。

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16歳で数学を捨てるとGABAが減り「脳力」が落ちる?

オックスフォード大学の心理学の研究チームらによると、16で数学の勉強をやめた人は、そうでない人と比べてGABA(γアミノ酸)が少ないということが判明しました。

そもそもGABAとは、脳の血流をよくして脳細胞の代謝を高める働きやストレス軽減、リラックス効果があります。医療の分野でも注目されている成分で、食品にギャバが含まれた商品が販売されているほどです。

イギリスでは、16歳になると「数学」を学ばないという選択をすることができ、大学入試では文系などを志す場合は、必要な科目を自ら3つに絞ることが可能なようです。

人間の発達段階の青年前期(12~18歳)にあたる16歳というステージは、脳の発達や認知機能の変化に関わりのある大切な時期です。

オックスフォード大学の研究チームらは、14~18歳の計133人の生徒を対象に、数学を選んだグループとそうでないグループの脳をそれぞれ調べてみました。

すると数学の勉強を選択しなかった生徒は、脳の認知機能と関係する部位(中前頭回)でGABA濃度が少ないことが分かりました。

中前頭回は、数学の問題を解答や推論、学習・記憶と関係する部位です。

研究チームによると、中前頭回のGABA濃度の測定で19か月後の数学の成績を予測することも成功したようです。

加えてGABA濃度の違いは、数学を捨てるグループとそうでないグループでは変化がなかったことが判明。

他にも、物理や化学、生物などの理系科目の選択では、GABA濃度の変化は起きなかったようです。

それでは何故、「数学」のみがGABA濃度と関係があるのでしょうか。

1つの原因として、物理や化学、生物は論理的な思考が必要ですが、「数学」の代替にはならないということです。

研究チームは、「数学」以外の分野で中前頭回というGABA濃度と関係があった部位を刺激する学習や、数学に匹敵する特別な刺激を確かめていくようです。

16歳から「数学」の勉強をやめてしまった人は、勉強を続けた人と比べるとGABA濃度が少なく、ある「損」をしているようです。

GABAは前章で紹介したように、脳の血流を活発にして脳細胞の代謝を高める働きや、ストレス軽減やリラックス効果があります。

※基本的に、GABA(γアミノ絡酸)は抑制性の神経伝達物質として働き、鎮静や抗不安作用があります。

そのため、GABA(γアミノ絡酸)が少ないと、柔軟な認知機能が働かず、自らの「思考のクセ」に陥り、ストレス耐性が低くなってしまう可能性があります。

認知機能とは、理解や判断、倫理などの知的機能のことを指します。

数学の勉強を続けるということは、推論・問題の解決などに必要な神経伝達物質を養い、目の前の課題を解決していこうとする力や、筋道を立てて考える力がつくと言えます。

つまり、1つの物事を多方面からアプローチして思考できるのでストレスに強い脳力を得られると考えられます。

例えば、「店内40%オフで、レジにさらに30%オフでーす!」の店員さんの声を「70%もオフなの?」と単純に考えるのか。それとも、「店内40%オフで、レジでさらに30%オフって…58%オフじゃない?」という風にも考えられるのか。

人間の青年前期(12~18歳)にあたる16歳は、脳の発達や認知機能の変化に関わりのある大切な時期でもあるので、「数学」は外せないですね。

数学の得意・不得意について

「数学」のできる、できないはGABAだけでなく、「グルタミン酸」も関係があるというオックスフォード大学の研究がありました。

6歳の子どもから大学生までの255人の神経伝達物質について調査したところ、「若い人」は数学的概念に関するとされる「左頭頂間溝」という部分のGABAが「多く」、グルタミン酸が「少ない」ほど数学的能力が高く、大人の場合はこれが全くの逆転現象で起きるというもの。

研究チームらの推測によると、この現象が起きるのは、数的な処理の方法(脳の部位)が変わっている可能性があるためのようです。

仮説の一つに、その処理方法が「海馬」に移り、「左頭頂間溝」の役割が減っていき、2つの神経伝達物質の関係に逆転が生じるというものがあります。

そうなると、大人にとって数学のできる・できないは、GABA不足が損するというわけでなく、「得」する可能性があるということが言えますね。

但し、グルタミン酸もセットで考えた上での話ですが。。。

まとめ

・16歳から数学を捨てると、そうでない人と比べると脳の認知機能と関係する部位(中前頭回)にあるGABA(γアミノ絡酸)が少ない。

・GABAは、脳の血流を活発にして脳細胞の代謝を高める働きや、ストレス軽減やリラックス効果がある。基本的には、抑制性の神経伝達物質として働いているため、鎮静や抗不安作用がある。

・人間の発達段階にあたる16歳というステージは、脳の発達や認知機能の変化に関わりのある大切な時期。数学を勉強しないと、大人になってから柔軟な思考ができず苦労する可能性がある。

・数学の得意・不得意は、GABAとグルタミン酸の2種類の神経伝達物質に関係があり、子どもと大人によって数を処理する脳の使う部位が違うので、必ずしもGABA不足が損とは限らない場合もある。

それでは、最後までご覧くださりありがとうございました。

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